2022/05/24
歯みがきを嫌がって、なかなか口を開けてくれない。
前歯の裏が、なんとなく白っぽく見える気がする。でも痛がってはいないし、まだ乳歯だし――。
「歯医者さんは、もう少し大きくなってからでいいかな」。そう思いながら、気になる気持ちをそのままにしていませんか。
もし、そうお感じなら。歯医者を「むし歯ができてから行く場所」と捉えていらっしゃるかもしれません。子どもにとっての歯医者は、少し違う意味を持ちます。
この記事では、お子さまを歯医者に連れていくタイミングを、「治療」ではなく「むし歯にさせない」という視点から、年齢別のケアとあわせてお伝えします。
この記事でわかること
- 子どもを歯医者に連れていく最初のタイミング
- 子どものむし歯が「気づいたときには進んでいる」理由
- 小児歯科で行う予防処置と、フッ素の正しい使い方(最新の推奨量)
- 0歳〜中高生までの年齢別ケアのポイント
- 妊娠中・ご家族のお口のケアが大切な理由
1. 結論:「最初の歯が生えたら」一度ご相談ください
いちばん多いご質問から、お答えします。
「子どもは、何歳から歯医者に連れていけばいいですか」
結論から申し上げると、目安は「最初の乳歯が生えてきたころ(生後6〜9か月ごろ)」です。遅くとも、1歳6か月児健診のころまでに一度、かかりつけの歯科医院でお口を診てもらうことをおすすめします。
早く行くのは「治療のため」ではありません
「むし歯もないのに、行って何をするの?」と思われるかもしれません。早い時期の受診の目的は、治療ではなく、次の3つです。
- 歯医者という場所に、痛い思いをする前に慣れること
- 生え始めの時期に合った歯みがき・仕上げみがきの方法を知ること
- むし歯になりやすい生活習慣(飲み物・おやつの与え方)を、早めに見直すこと
自治体の1歳6か月児健診・3歳児健診でも歯科健診は行われますが、限られた時間での集団健診です。日ごろの様子を相談でき、成長に合わせて継続的に診てもらえる「かかりつけ」を持っておくと安心です。
歯医者デビューの理想は、「むし歯ができる前」です。初めての歯医者が治療の痛い記憶にならないことが、その後の通院を大きく左右します。
2. 子どものむし歯は「気づいたときには進んでいる」3つの理由
なぜ、そこまで早くからの予防が大切なのか。それは、子どものむし歯には、大人とは違う特徴があるからです。
理由1:歯がやわらかく、進むのが早い
乳歯や生えたばかりの永久歯は、表面のエナメル質が薄く、まだ十分に硬くなっていません。乳歯のエナメル質の厚みは、永久歯のおよそ半分ほどといわれています。そのため、一度むし歯になると、短い期間で歯の内側へと進んでしまいます。
理由2:色がつかず、見た目でわかりにくい
むし歯というと「黒い穴」をイメージされる方が多いと思います。しかし子どものむし歯は、白っぽく濁ったり、薄い茶色だったりと、色の変化がはっきりしないことが少なくありません。進行の速いむし歯は「急性う蝕(きゅうせいうしょく)」と呼ばれ、保護者の方が仕上げみがきをしていても見逃されがちです。
理由3:痛みを訴えにくい
子どもは、むし歯が神経の近くまで進んでいても、強い痛みを訴えないことがあります。また、小さなお子さまほど「痛い」「しみる」をうまく言葉にできません。「痛がってから」では、すでに大きなむし歯になっていることがあるのです。
進みやすく、見えにくく、痛みも出にくい。だからこそ子どもの歯は、「むし歯になってから治す」より「むし歯にさせない」ことが何より大切です。
3. 小児歯科は「治す場所」ではなく「守る場所」
小児歯科というと、子どものむし歯治療を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、小児歯科の中心にあるのは「予防」です。
当院では、お子さまのお口の状態や年齢に合わせて、次のような予防処置を組み合わせて行っています(すべての処置を毎回行うわけではありません)。
お口の検査
むし歯の有無だけでなく、歯ぐきの状態、歯の生え方、かみ合わせを確認します。必要に応じてレントゲンで、目では見えない歯と歯のあいだのむし歯や、これから生えてくる永久歯の様子も確認します。
歯みがき・仕上げみがきの指導
ふだんの歯みがきの様子をうかがい、お子さま本人と保護者の方それぞれに、年齢に合った磨き方をお伝えします。むし歯予防の土台は、毎日のご家庭でのケアです。ここには、しっかり時間をかけています。
専門的なクリーニング(PMTC)
PMTCは「Professional Mechanical Tooth Cleaning」の略で、専用の器具を使って、ご家庭の歯みがきでは落としきれない汚れを取り除くクリーニングです。歯石がついている場合は、あわせて除去します。
フッ素塗布
歯の質を強くし、むし歯になりかけた部分の修復を助けます。詳しくは、次の章でご説明します。
シーラント
奥歯のかみ合わせの面には、細かく深い溝があり、歯ブラシの毛先が届きにくい場所です。シーラントは、この溝を歯科用のプラスチック(樹脂)であらかじめ埋めて、汚れがたまりにくくする予防処置です。特に、生えたばかりの6歳臼歯(6歳ごろに生える最初の大人の奥歯)に有効です。
お口の機能のチェック
かむ力、舌や唇の動き、飲み込み方、口呼吸のくせなども確認します。こうした機能は、歯並びやあごの成長とも深く関わっています。
当院の小児歯科については、詳細はこちら:小児歯科をご覧ください。
4. フッ素の、本当のところ
「フッ素って、本当に必要?」「体に悪くないの?」――保護者の方から、よくいただくご質問です。
フッ素の2つの働き
歯は、食事のたびに、むし歯菌がつくる酸によって表面のミネラルが溶け出しています(脱灰)。そして、唾液の働きによって、溶けた部分は少しずつ元に戻ります(再石灰化)。この「溶ける」と「戻る」のバランスが崩れ、溶ける側に傾き続けると、むし歯になります。
フッ素は、このバランスを「戻る」側に傾けてくれます。
- 再石灰化を助ける:溶けかけた歯の表面の修復を促します
- 酸に強い歯にする:歯の表面を、酸に溶けにくい性質に変えます
歯科医院での塗布と、毎日の歯みがき粉は「両輪」
歯科医院では、ご家庭用よりも濃度の高いフッ素を定期的に塗布します。一方で、毎日の効果を支えるのは、フッ素入りの歯みがき粉です。どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることで効果が高まります。
2023年には、日本小児歯科学会などの4学会が、年齢に応じたフッ素入り歯みがき粉の使い方を新たに示しました。
| 年齢 | フッ素濃度の目安 | 1回の使用量の目安 |
|---|---|---|
| 歯が生えてから2歳 | 900〜1,000ppm | 米粒程度(1〜2mm) |
| 3〜5歳 | 900〜1,000ppm | グリーンピース程度(5mm) |
| 6歳〜成人 | 1,400〜1,500ppm | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) |
みがいた後は、少量の水で軽く1回ほどゆすぐ程度にとどめると、フッ素がお口に残りやすくなります。うがいができない年齢のお子さまは、ティッシュやガーゼで軽くふき取る方法もあります。
参考:日本小児歯科学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」
安全性について
フッ素は、お茶や海産物など、ふだんの食品にも含まれている身近な成分です。歯科医院での塗布や、年齢に合った量の歯みがき粉の使用は、安全性が確認された方法です。ご不安な点があれば、遠慮なくお尋ねください。
5. 年齢別・お口のケアのポイント
お子さまの歯は、成長とともに状態が変わります。それぞれの時期に、気をつけたいポイントがあります。
0〜2歳:歯が生えたら、ケアのスタート
乳歯は、生後6〜9か月ごろから生え始めます。最初は、ガーゼで歯をやさしくふくところから始め、慣れてきたら赤ちゃん用の歯ブラシに移りましょう。
この時期に気をつけたいのは、甘い飲み物の「だらだら飲み」です。ジュースやスポーツドリンク、乳酸菌飲料を哺乳瓶やマグで少しずつ飲み続けると、お口の中が長時間むし歯になりやすい状態になります。
最初の歯が生えたら、一度歯科医院へ。歯みがきのコツや、フッ素の使い方をお伝えします。
3〜5歳:おやつの「時間」と、奥歯の溝に注意
乳歯が生えそろい、おやつを口にする機会が増える時期です。むし歯のなりやすさは、甘いものの「量」だけでなく「回数」と「時間」に左右されます。おやつは時間を決めて、だらだら食べにならないよう工夫しましょう。
また、この時期のむし歯は、奥歯の溝や、奥歯と奥歯のあいだから始まることが多くあります。仕上げみがきでは、奥歯を重点的に。歯と歯のあいだには、デンタルフロスの使用もおすすめです。
6〜12歳:生えたての永久歯を守る
6歳ごろから、乳歯の奥に「6歳臼歯」が生え、前歯も永久歯へと生え変わっていきます。生えたての永久歯はまだやわらかく、むし歯になりやすい状態です。また6歳臼歯は、生えている途中は歯ぐきより低い位置にあるため、歯ブラシが届きにくい歯でもあります。
自分で歯をみがけるようになっても、仕上げみがきは小学校中学年ごろまで続けるのが理想です。定期的な検診とフッ素塗布、必要に応じてシーラントで守っていきましょう。
この時期は、歯並びやかみ合わせが気になり始める時期でもあります。あごの成長を利用できるのは成長期ならではです。気になることがあれば、早めにご相談ください。
子どもの歯並びについては、詳細はこちら:小児矯正をご覧ください。
中学生・高校生:自分で守る力を育てる
仕上げみがきを卒業し、部活動や塾で生活リズムが不規則になりやすい時期です。スポーツドリンクの飲みすぎや、歯ぐきの炎症(歯肉炎)が増えてきます。自分のお口を自分で守る習慣を身につけるためにも、定期検診を続けていきましょう。
6. 初めての歯医者を「いい思い出」にするために
「泣いてしまったらどうしよう」と心配される保護者の方も多いと思います。初めての受診は、次のような点を意識していただくとスムーズです。
- お昼寝の時間を避け、機嫌のよい時間帯に予約する
- 「痛くないよ」「注射しないよ」など、怖さを連想させる言葉は使わない
- 「悪い子は歯医者さんに連れていくよ」など、歯医者をしかる材料にしない
- 終わったら、たくさんほめてあげる
当院では、慣れないうちは無理に治療を進めず、診療室の雰囲気や器具に慣れることから始めることもできます。泣いてしまっても大丈夫です。治療の進め方は、保護者の方とご相談しながら決めていきます。
7. お子さまの歯の健康は、妊娠中から始まっています
妊娠中は、ホルモンバランスの変化やつわりの影響で歯みがきが難しくなり、歯ぐきの腫れや出血(妊娠性歯肉炎)、むし歯が起こりやすくなります。
また、歯周病は早産や低体重児出産との関連も指摘されています。お母さんご自身のためにも、生まれてくる赤ちゃんのためにも、体調が安定しやすい妊娠中期(いわゆる安定期、16〜27週ごろ)に一度、歯科検診を受けておくと安心です。
受診の際は、母子健康手帳をお持ちいただき、妊娠週数や体調をお知らせください。レントゲンやお薬が必要な場合も、妊娠中であることを踏まえて判断します。
8. 「むし歯はうつる」の、今の考え方
「赤ちゃんにむし歯菌がうつるから、スプーンや食器の共有はだめ」――そう聞いて、気をつけてこられた方も多いのではないでしょうか。
実は、この考え方は近年見直されています。日本口腔衛生学会は2023年、口の中の細菌は、日常のふれあいを通して生後早い時期から自然に親から子へ伝わっており、食器の共有を避けることにこだわりすぎる必要はないという見解を示しました。
むし歯を防ぐうえで大切なのは、次の3つです。
- 砂糖をとる回数・量を控えること
- 毎日の仕上げみがき
- フッ素を上手に使うこと
参考:日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」
それでも、家族で通う意味がある
では、ご家族のお口のケアは関係ないのかというと、そうではありません。
食事やおやつの習慣、歯みがきの習慣は、家族で共有されるものです。保護者の方が定期的に歯医者に通う姿は、お子さまにとって「歯医者は、行くのが当たり前の場所」という何よりの手本になります。そして、お父さん・お母さんご自身の歯と歯ぐきを守ることは、ご家族みんなが元気に食事を楽しみ続けることにつながります。
ご家族そろっての定期検診は、お子さまの歯を守る習慣づくりの第一歩です。
大人の方の予防・歯周病ケアについては、詳細はこちら:予防診療・歯周病をご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 歯が生える前でも、受診していいですか?
A. はい、大丈夫です。歯が生える前の口のケアや、授乳・離乳食の進め方に関するご相談も承ります。気になることがあれば、時期を問わずご相談ください。
Q2. 泣いて暴れてしまいそうで心配です。
A. 小さなお子さまが泣いてしまうのは自然なことです。慣れるまでは無理に治療を進めず、診療室の雰囲気に慣れることから始めることもできます。進め方は、保護者の方とご相談のうえで決めていきます。
Q3. 定期検診は、どのくらいの間隔で通えばいいですか?
A. お口の状態やむし歯のなりやすさによって異なりますが、当院では1〜3か月に一度の検診をおすすめしています。お子さまに合った間隔をご提案します。
Q4. フッ素は、毎日使っても大丈夫ですか?
A. 年齢に合った濃度・量を守れば、毎日使っていただいて問題ありません。年齢別の目安は、本文の「4. フッ素の、本当のところ」をご覧ください。
Q5. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 検診やむし歯の治療など、多くの処置は健康保険の対象です。名古屋市にお住まいの場合、子ども医療費助成制度の対象となることがあります(制度の詳細は名古屋市の案内をご確認ください)。保険適用外の処置がある場合は、事前にご説明します。料金については、詳細はこちら:料金表をご覧ください。
9. まずは、「慣れる」ための一回から
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
子どもの歯は、進みやすく、見えにくく、痛みも出にくい。だからこそ、むし歯ができる前から歯医者に通い、「守る」習慣をつくっていくことが大切です。
いきなり治療をするわけではありません。まずは、お口を見せる練習と、歯みがきのご相談から。それだけでも、お子さまにとって歯医者は「怖い場所」から「いつも行く場所」に変わっていきます。
最初の歯が生えたら。あるいは「まだ一度も行ったことがない」と思い当たったら。そのときが、ちょうどよいタイミングです。
名古屋市守山区の鈴木歯科医院では、0歳のお子さまから中学生・高校生まで、成長に合わせた予防中心の小児歯科を行っています。ご家族そろっての定期検診も歓迎しています。
ご予約は、詳細はこちら:ネット予約から、またはお電話(052-736-4088)にて承っております。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療方針を示すものではありません。お子さまのお口の状態や必要な処置には個人差があります。実際の治療にあたっては、歯科医師の診察をお受けください。

執筆者・監修者のプロフィールを詳しく見る
院長・歯科医師
鈴木 明(すずき あきら)
愛知学院大学歯学部卒業後、同大学第一口腔外科学講座に入局。大学病院で口腔外科を研修し、名古屋大学医学部での麻酔科研修の後、公立陶生病院歯科口腔外科での勤務を経て、平成3年に鈴木歯科医院を開設しました。
開院以来、地域の皆さまの一般歯科診療に携わり、口腔外科・インプラント治療を中心に研鑽を重ねています。お口全体の健康を見据えた治療を大切にしています。
現在も愛知学院大学歯学部冠橋義歯・口腔インプラント学講座に所属し、臨床に加えて研究・教育にも取り組んでいます。
主な経歴
- 愛知県立千種高校 卒業
- 愛知学院大学歯学部 卒業
- 愛知学院大学歯学部 第一口腔外科学講座 入局
- 愛知学院大学歯学部 第一口腔外科学講座 専攻生
- 名古屋大学医学部 麻酔科研修
- 公立陶生病院 歯科口腔外科医長
- 平成3年 鈴木歯科医院 開設
- 愛知学院大学歯学部 高齢者歯科学講座 研究生
- 愛知学院大学歯学部 冠橋義歯・口腔インプラント学講座 非常勤講師
所属学会
- 日本口腔インプラント学会 会員
- 日本成人矯正歯科学会 会員
- 日本歯科放射線学会 会員
- 日本矯正歯科学会 会員