2022/06/19
朝起きると、あごがだるい。こめかみのあたりが重い。
家族から「夜中にギリギリ音がしていたよ」と言われたけれど、自分ではまったく覚えがない。
「寝ている間のことだし、どうしようもない」――そう思って、そのままにしていませんか。
もし、そうお感じなら。歯ぎしりは、眠りの状態と深く関わっています。そして、寝ている間のことでも、歯やあごを守るためにできることがあります。
この記事では、歯ぎしりと睡眠の関係、寝方や枕など眠りの環境でできる工夫、そして歯科医院での対策についてお伝えします。
この記事でわかること
- 寝ている間の歯ぎしりが、歯や体に与える影響
- 歯ぎしりと「眠りの浅さ」の関係
- 寝方・枕・寝る前の習慣でできる工夫
- 歯科医院で行う歯ぎしりの対策(マウスピース)
1. 寝ている間の歯ぎしりは、思った以上に歯に負担をかけています
歯ぎしりには、歯をギリギリとこすり合わせるもの、グッと強く食いしばるもの、カチカチと小刻みにかみ合わせるものなど、いくつかのタイプがあります。
眠っている間は、起きているときのように力の加減がききません。そのため、ふだんの食事よりもはるかに強い力が、長い時間にわたって歯やあごにかかることがあります。
歯ぎしりが続くと起こりやすいこと
- 歯のすり減り・欠け・ひび:歯の先が平らになったり、歯が割れたりすることがあります
- 知覚過敏:すり減ってエナメル質が薄くなると、冷たいものがしみやすくなります
- 詰め物・被せ物の破損:セラミックの被せ物やインプラントにも大きな負担がかかります
- 歯ぐき・骨への負担:歯周病がある場合、その進行を早める要因になります
- あごの痛み(顎関節症):口を開けにくい、あごが鳴るといった症状につながることがあります
- 頭痛・肩こり:かむための筋肉が緊張し、朝の頭の重さや肩こりの一因になることがあります
歯ぎしりそのものは、多くの人に見られる現象です。問題になるのは、その力によって歯やあご、被せ物などに影響が出ているときです。
2. 歯ぎしりは「眠りが浅くなったとき」に起こりやすい
睡眠中の歯ぎしりは、眠りが浅くなり、脳が一瞬目覚めかけたとき(微小覚醒)に起こりやすいことがわかっています。本人は目を覚ましていないため、気づかないまま繰り返していることが少なくありません。
海外の調査では、睡眠中の歯ぎしりは成人の1割弱に見られるとされていますが、多くの方は自覚がありません。ご家族からの指摘や、歯科医院で歯のすり減りを指摘されて初めて気づくケースがほとんどです。
歯ぎしりを起こしやすくする要因
歯ぎしりの原因は、ひとつに決まるものではありません。次のような要因が重なって起こると考えられています。
- ストレス・緊張:もっともよく知られる要因です
- 眠りを浅くする習慣:寝る前のアルコール、喫煙、カフェインの摂取など
- いびき・睡眠時無呼吸:呼吸が止まりかけて眠りが浅くなる際に、歯ぎしりが起こりやすいことが指摘されています
- その他:逆流性食道炎や、一部の薬の影響が関わることもあります
以前は「かみ合わせや歯並びの悪さが歯ぎしりの主な原因」と考えられていましたが、現在では、睡眠の状態や脳の働きのほうが大きく関わっていると考えられています。
3. 寝方・枕・寝る前の習慣でできる工夫
歯ぎしりは眠りの浅さと関わるため、眠りの質を整えることが、歯ぎしりをやわらげる助けになります。
寝る姿勢:うつ伏せは避けましょう
うつ伏せや、腕・手を枕にして横向きで寝る姿勢は、あごに偏った力がかかりやすく、食いしばりやあごの負担につながることがあります。
一方、仰向けは、いびきや睡眠時無呼吸のある方では、舌が喉の奥に落ち込んで呼吸がしにくくなり、かえって眠りが浅くなることもあります。寝る姿勢と歯ぎしりの関係はまだはっきりとはわかっておらず、「この姿勢なら必ず防げる」というものはありません。うつ伏せを避け、呼吸がしやすく、体がリラックスできる姿勢を選ぶことが大切です。
枕:首に負担のかからない高さに
枕が高すぎると、あごが引けて気道が狭くなったり、首や肩の筋肉が緊張したりします。仰向けのときに首の付け根まで支えられ、顔がやや下を向く程度の、自然な高さが目安です。横向きで寝る方は、肩幅に合った高さを選び、首がまっすぐになるよう調整しましょう。
寝る前の習慣:眠りを浅くするものを控える
- 寝る1時間前には、スマートフォンやパソコンの使用を控える
- 夕方以降のカフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)を控える
- 寝酒は避ける:アルコールは寝つきをよくしても、眠りの後半を浅くします
- ぬるめのお風呂や軽いストレッチで、体の緊張をほぐす
- あごや首まわりの筋肉を、手でやさしくほぐす
日中の「食いしばり」にも気づいて
何かに集中しているとき、気づくと上下の歯がくっついていませんか。本来、リラックスしているときの上下の歯は、少しすき間が空いている状態です。日中に歯を接触させるくせがある方は、夜間の歯ぎしり・食いしばりもしやすい傾向があります。「唇は閉じて、歯は離す」を意識してみましょう。
寝方や枕の工夫は、歯ぎしりを「治す」ものではなく、眠りの質を整える助けになるものです。歯やあごへの影響がすでにある場合は、歯科医院での対策をあわせて行いましょう。
4. 歯科医院での歯ぎしり対策
マウスピース(ナイトガード)
歯ぎしりへの対策として、もっとも一般的なのが、寝るときに装着するマウスピース(ナイトガード)です。歯型をとり、お一人おひとりの歯に合わせて作製します。
マウスピースは、歯ぎしりそのものを止めるものではありません。けれど、上下の歯のあいだでクッションの役割を果たし、歯のすり減りや欠け、被せ物の破損を防ぎ、あごや歯ぐきへの負担をやわらげます。歯ぎしりの診断のもとで作製するマウスピースは、健康保険の対象となる場合があります。
市販のマウスピースもありますが、歯に合っていないと、かえってかみ合わせやあごに負担がかかることがあります。歯科医院で、お口に合ったものを作製することをおすすめします。
すり減った歯や被せ物の治療
すでに歯が欠けたり、しみたりしている場合は、その治療を行います。被せ物やインプラントがある方は、歯ぎしりの力から守ることが、長持ちさせるためにも大切です。
必要に応じて、医科と連携
大きないびきや、睡眠中の呼吸の停止を指摘されたことがある方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。その場合は、睡眠外来や耳鼻咽喉科などでの検査をおすすめすることもあります。
すり減った歯や被せ物の治療については、詳細はこちら:一般歯科、インプラントをお使いの方はインプラントもご覧ください。
5. 歯ぎしりセルフチェック
次のような項目に当てはまる場合、寝ている間に歯ぎしりや食いしばりをしているかもしれません。
- 家族から、寝ている間の歯ぎしりの音を指摘された
- 朝起きたとき、あごがだるい、口を開けにくい
- 朝、こめかみのあたりが重い、頭痛がする
- 歯の先が平らにすり減っている、歯が短くなった気がする
- 冷たいものがしみる歯がある
- 頬の内側や舌のふちに、歯の跡がついている
- 詰め物や被せ物が、よく外れたり欠けたりする
ひとつでも当てはまれば、一度お口の状態を確認してみることをおすすめします。
よくあるご質問
Q1. 歯ぎしりは、治りますか?
A. 歯ぎしりを完全になくす確実な方法は、現在のところ確立されていません。そのため、マウスピースで歯やあごを守りながら、睡眠や生活習慣を整えて、歯ぎしりの影響をできるだけ小さくしていくことが基本になります。
Q2. 矯正治療やかみ合わせの調整で、歯ぎしりは治りますか?
A. 現在の考え方では、かみ合わせや歯並びは歯ぎしりの主な原因ではないとされており、歯ぎしりを治す目的で矯正やかみ合わせの調整を行うことは一般的ではありません。ただし、すり減りや歯並びの状態によっては、別の目的で治療をご提案することがあります。
Q3. 子どもの歯ぎしりは、心配ですか?
A. お子さまの歯ぎしりは比較的よく見られ、あごの成長や歯の生え変わりに伴うもので、多くは成長とともに落ち着きます。ただし、歯のすり減りが大きい場合や、いびきを伴う場合は、一度ご相談ください。
Q4. マウスピースは、保険で作れますか?
A. 歯ぎしりの診断のもとで作製するマウスピースは、健康保険の対象となる場合があります。料金については、詳細はこちら:料金表をご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。
6. 寝ている間の歯ぎしりも、守ることはできます
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
歯ぎしりは、寝ている間に無意識に起こるため、自分ではなかなか気づけません。そして、眠りの浅さやストレスなど、生活の中のさまざまな要因と結びついています。
眠りの環境を整えること。そして、マウスピースで歯やあごを守ること。この2つを組み合わせることで、歯ぎしりによるダメージを小さくしていくことができます。
「歯ぎしりしてたよ」と言われたら。朝、あごのだるさを感じたら。それは、歯からの小さなサインです。
名古屋市守山区志段味の鈴木歯科医院では、歯のすり減りやあごの状態を確認し、お一人おひとりに合ったマウスピースの作製を行っています。
ご予約は、詳細はこちら:ネット予約から、またはお電話(052-736-4088)にて承っております。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療方針を示すものではありません。症状や必要な治療には個人差があります。実際の治療にあたっては、歯科医師・医師の診察をお受けください。

執筆者・監修者のプロフィールを詳しく見る
院長・歯科医師
鈴木 明(すずき あきら)
愛知学院大学歯学部卒業後、同大学第一口腔外科学講座に入局。大学病院で口腔外科を研修し、名古屋大学医学部での麻酔科研修の後、公立陶生病院歯科口腔外科での勤務を経て、平成3年に鈴木歯科医院を開設しました。
開院以来、地域の皆さまの一般歯科診療に携わり、口腔外科・インプラント治療を中心に研鑽を重ねています。お口全体の健康を見据えた治療を大切にしています。
現在も愛知学院大学歯学部冠橋義歯・口腔インプラント学講座に所属し、臨床・研究・教育にも取り組んでいます。
主な経歴
- 愛知県立千種高校 卒業
- 愛知学院大学歯学部 卒業
- 愛知学院大学歯学部 第一口腔外科学講座 入局
- 愛知学院大学歯学部 第一口腔外科学講座 専攻生
- 名古屋大学医学部 麻酔科研修
- 公立陶生病院 歯科口腔外科医長
- 平成3年 鈴木歯科医院 開設
- 愛知学院大学歯学部 高齢者歯科学講座 研究生
- 愛知学院大学歯学部 冠橋義歯・口腔インプラント学講座 非常勤講師
所属学会
- 日本口腔インプラント学会 会員
- 日本成人矯正歯科学会 会員
- 日本歯科放射線学会 会員
- 日本矯正歯科学会 会員